乱数決の原理

[KOK 0036]

27 Jan 1997


日曜日は北九州市議会選挙だった。

これまで私は民主主義批判の一貫として、この政治システムが根本に「多数決の原理と少数意見の尊重」という、論理的に両立不可能な矛盾をかかえている点をあげてきた。そこで、ついつい少数民族主義に走ってしまいたくなるわけだが、今回のお話は、いわば修正民主主義ともいうべき妥協案である。

現行の民主主義では、いかに議論がつくされようとも、利害が一致しない場合の最終的な決定手段は、多数決である。しかしながら世の中、多数が常に正しいとは限らないし(むしろ逆の事例は枚挙にいとまない)、多数の幸せが全体の幸せというのも杜撰な話だ(へたをすれば全体主義である)。

少数民族主義者の私が提案するのが「乱数決の原理」である。とはいってもむちゃくちゃランダムに決めればいいといっているわけではない。一寸の虫にも五分の魂。少数意見を尊重しながら、なおかつ多数の意見も重視する画期的なアイデアである。

例を使って簡単に説明しよう。たとえば100人の議会で、ABCの3つの決議案がでて採決すると、決議案Aの賛成者70名。決議案Bの賛成者25名。決議案Cの賛成者5名であったとする。従来の多数決であれば、この時点で決議案Aが採択される。

しかし、乱数決ではそれぞれの票をもとに確率表をつくる。つまり、議案A=70/100。議案B=25/100。議案C=5/100となる。3色に色分けされた玉を、それぞれの票のぶんだけ袋に入れてもよい。あとはエイヤッと、くじを引くだけである。

こうすれば、それぞれの票に見合った確率で提案が採択され、少数意見もそれなりに尊重されることになる。さらに、たとえば49:51なんていう僅差では、どちらにころぶかわからないので、弊害ばかりの多い多数派工作もほとんど意味をなさなくなる。

選挙も同様に、得票数/投票数の確率表をつくり、定数になるまで試行(くじ引き)をくり返す。とやればよい。こうすれば、1万人の投票数で1票しか獲得できなかった人も、万が一のことがおきれば当選するのである。

これをとりあえず、乱数決の原理にもとづく「比例確率制」と呼んでおこう。いかがなものであろうか。

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Takekawa Daisuke