びわアタック

[KOK 0057]

11 Jun 1997


アタックについて話をしよう。アタックとは、かれこれ10年以上前に当時北海道大学にいた私の友人が教えてくれた概念で、要するに「自然界に生息しているものを、摂食を目的として、捕獲または採集すること」である。

具体例をあげる。たとえば、畑に生息する大根を、大根おろしにするために採集することを「ダイコンアタック」とよび、鐘の鳴る丘に生息する羊を、ジンギスカン鍋にするために捕獲することを「羊アタック」と呼ぶ。

ここで重要な点は、「あらゆる生物は自然界に生息するというただ一点において、なんぴとによっても、その生命を所有されない」という主張である。さらにいえば「その生命を奪ったもののみが、かつてその生命を所有していた生物のかわりに、その入れ物(なきがら)を所有できる」とされる。

よくわからぬが、現行法では「どろぼう」と呼ばれていることも、アタックのカテゴリーの中に含まれるかもしれない。

これまで、われわれは幾多のアタックを敢行した。栗アタック・鴨アタック・鯉アタック・きのこアタック・・。そしてそのいく例は失敗におわり、成功したいく例は幸せな食卓を演出した。

ここに私が、毎年のように繰り返しおこなっていたアタックに「びわアタック」がある。京都にはいくつかのびわアタックポイントがあり、それらを巡回するだけで、幸せなびわライフが約束されていた。

昨日、私はこの小倉においても理想的なびわアタックポイントを発見したのである。そして見事にアタックを成功させた。そのポイントとは、北九州大学に隣接する、小倉自衛隊駐屯地の中にある3本のびわの木である。

もちろん私は、たかがびわのために銃器に身をさらすようなおろかな真似はしない。正門から堂々と入構し、しかるべき責任者の許可をとって、自衛官の立ち会いのもと、アタックを敢行したのである。きさくな自衛官は、「こんな任務ははじめてだ」といいながら、楽しげに「塀の周りに張り巡らされている糸に触れると、直ちに部隊がそこに集結するようになってるんだよ」などと国家機密を漏洩してくれた。

おもえば、これまで30年以上生きてきて、自衛隊に何かをしてもらったのは、今回がはじめてである。これによって持論の「自衛隊廃止レスキュー隊創設論」がおおきく変更されることはないが、自衛隊の新しい任務としてビワの育成が追加された。まあ、このさい憲法解釈をめぐる複雑な議論は保留して、小倉駐屯地には感謝の意を表したい。これを前例に来年もよろしく。

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Takekawa Daisuke