贅沢

[KOK 0122]

24 Nov 1999


船に乗っても、まだ、頭の中でバッハの「マタイ受難曲」のコーラスが鳴り響いていた。

ゼミ生のひとりが参加する北九州聖楽研究会のコンサートを途中で抜け出し、大阪にむかう名門フェリーに乗り込んだ。

手には小倉玉屋で買ったビールとカマンベールチーズ。ビールはヒューガルデン・ホワイト。チーズはユニコーン・ゴールド。どちらも昔からのお気に入り。

15夜も近く太った月が瀬戸内海を照らし、光に浮かぶ島影がまるで墨絵のようだ。

ビールを飲み干すと、こんどは、出たばかりの重松清の単行本を、ちょっと目を潤ませながら、読みすすめる。

北九州と大阪を結ぶナイトフェリー。大学でチケットを買うと、片道わずか3900円。チーズ600円ビール350円。なんて値段を書くのは野暮だけど。ぼくはこういうのを贅沢とよびたい。

これで、研究会の発表さえなければ文句はないのだけど・・・。

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Takekawa Daisuke