ごちそう

[KOK 0125]

08 Dec 1999


先週の日曜日の自然薯実習IIIは、ほんとうに「おいしい」会だった。

参加者は子供も入れて20名。ちょっと大所帯。いつものことながらいろいろな人脈が交錯しているため、初対面の人が多かった。

雨が心配されていたが幸い天気はもち、われわれは山に向かった。魚茂のおやじは10年ぶりの自然薯掘りに完全武装。

山芋の黄葉はもうずいぶん落ちてしまい、ツルのありかを探すのにはずいぶん苦労したが、われわれのヤムアタックも回を重ねるごとに手際がよくなり、午前中で全員食べても余るほどの自然薯を掘った。

しかし今日はこれからが本番なのである。自然薯を持って「魚茂」にかえり、みんなで宴会の準備。これが、また、ふつうの宴会ではない。

今回のメンバーは酒と魚と料理人の3拍子がそろっている。

まずは、三井の寿の蔵人、川端氏が提供する日本酒3本。そのうちのひとつは袋吊り大吟醸の古酒。鑑評会用につくった酒で2年間低温貯蔵されていたものを、蔵からこっそりもってきてくれた。

そして、北九州の中央市場ではたらく汐月氏は、新鮮な魚介類をたっぷり持ってきてくれた。なかでも、とれたて旬のマサバと、ふつうには決して流通しない生の鯨肉かたまりは圧倒的。おろししょうがで食べた鯨肉の刺身は絶品であった。

魚茂の厨房にあれほどたくさんの女子大生が入ったのは、前代未聞のことだろう。思わず大将の頬がゆるむ。大将の指示に従ってみなてきぱきと仕事をこなす。さすが魚茂、プロ手際の良さを見せてくれる。山から戻ったばかりなのに、とぎれることなく次々とだされる料理。

魚茂の大将は若いころ京都の割烹で修行をしている。ダシの取り方に一分のすきもない。自然薯の命はダシ。命を吹き込まれたとろろ汁が、あつあつのご飯の上に覆い被さる。

酒と魚ととろろ汁の三段攻撃のうえに、鴨ロースをふんだんに使った鴨鍋が追い打ちをかける。しかしこれは魚茂が商売のために仕入れたものでは?「食べて食べて」と大将、店のネタをどんどん提供する。手作りの漬け物もポリポリポリ。

最後の締めは、お約束、鴨鍋雑炊。夕方にはみなすっかり満腹になって幸せないっぱい。ひさしぶりにいい宴会だった。すっかり感動した魚茂の大将は目頭を熱くして、これからも月に一回くらいみなで集まって、どこかに遊びに行って、商売抜きでこういう食事会をしようと提案する。大賛成。

すでに次回は確定している。12月25日午前中、「もちつき大会」である。今回参加できずに悔しい思いをしたあなた。ぜひぜひ。

さて、宴会が終わってちょっと考えてみた。みなで一緒にお酒を飲んだりごはんを食べたりすることは、基本的には好きだけど、結婚式の披露宴とかおおむね嫌いだ。忘年会とかも好きじゃない。

なにがちがうのかなぁと考えてみた。

なんだろな、高いお金を払って、まずいビールをつがれて、まずい料理を食べるのがいやなのかな。たしかに、これはかなり不快だな。

むかしいた大学のゼミでは、しょっちゅうゼミ室をつかって飲み会をしていた。ゼミがはじまる前に会の企画者が買い出しにいって、料理の下準備をして、ゼミ終了後にみなで食べる。

特別気負ったものばかりじゃなかったけど、京都にいた頃はけっこう頻繁に家でパーティもしていたな。ナマズが捕れたとか沖縄からマグロが来たとか理由を付けては人を集めていた。北九州にきたころも最初の年はよくやっていたけど、このごろはどうかな。

こういうのは、とても楽しい。

なにが違うのだろう。ひとつはっきりしてるのは料理を自分たちでつくるかどうか。いや、つくるだけに限らない、その料理を食べるために、どれだけ苦労したか、そのあたりに違いがあるような気がする。

街を探索して見つけたよさげなお店とか、やっと手に入れたすごい食材とか、ふつうならいけないような場所でのパーティとか。

ごちそうという言葉は、文字どうりに解釈すると、かけまわるという意味。さんざんかけまわったあとの飯はうまい。

そういう意味で、今回の自然薯実習は、申し分のない理想的な「ごちそう」だった。ああいう忘年会ばかりなら、楽しくてよいのだけど・・・。

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Takekawa Daisuke