タケのコ

[KOK 0129]

10 Apr 2000


タケノコを掘りにいった。「タケノコって竹の子供だからタケノコっていうんですねぇ。」と感心する人がいた。その人はそれまでタケ・ノコという、なにかそういう竹に似た別の植物があると思っていたというのだ。

一瞬おどろいたが、まあ、たしかにキノコは木の子供ではないので、別の植物という見方も可能かもしれない。

ぼくも以前に台湾の食堂で、タケノコ料理をたのんだときに、シナチクが大量に出てきて閉口した覚えがある。「ぼくはシナチクなんてたのんでないぞ!」と文句を言おうとしたが、よく考えるとシナチクはシナの竹ということでメニューに不備はない。

トウモロコシはもともと、日本にあったキビによく似た植物ということで、モロコシキビというのが中国から新しい栽培植物として入ってきて、それが省略されていつのまにかモロコシといわれるようになって、さらにその後あたらしくモロコシによく似た新作物が唐のモロコシということで、トウモロコシと呼ばれるようになったとか。とても事情がややこしい。

子供の絵本を読んでいたら、菜の花について書いてあった。その本ではナタネをまいたらナノハナができたというふうに、ナタネとナノハナを厳密に区別していた。ぼくは今まで一緒にして使っていたが、よく考えると区別したほうが正しい。種はナタネで、花はナノハナ。とすると、もともとのこの植物の名前は「ナ」なのだろうか?

イノシシのもともとの名前は「イ」。シシは肉。つまり「イ」の肉という言葉がいつの間にか、その生き物の名前に変わってしまった。

ナマコというのも同じだ。もともとの名は「コ」。それが生なのがナマコ。 火を通してあるのが「イリコ」。内蔵は「コノワタ」。

サカナは酒の菜。つまり酒のつまみ。酒のつまみには魚がよくあうから、いつの間にか魚がサカナとよばれるようになってしまった。魚のもともとのよび名はウオ。

「開いた開いた」のレンゲの花は蓮華。つまり蓮の花。今時たんぼにたくさんはえているのは、正しくはレンゲソウ。蓮華のような花をつける草という意味だ。でも今やレンゲというとあの可憐な花の方を思う人のほうが多い。

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Takekawa Daisuke