サルベージ・・失敗

[KOK 0165]

10 Jun 2001


イギリスに持ってきた2台のコンピューターのうち一台が先月動かなくなった。重たい作業の途中で、スタンバイ状態にして電源を切ったら、次に起動たときにシステムファイルを認識しなくなったのだ。このコンピューターには、フロッピーディスクもCD−ROMドライブもついておらず、もう一台のコンピュータとのネットワークを経由してのみ外界と交流が可能だった。

いわば、五感をすべて奪われた状態のこのマシンは、完全に沈黙したまま、のっぺりとした平らな物体と化した。もう一台の機械を使えば当面の仕事には問題はないが、バックアップがとれないのと、いざというときにイギリスで完全に仕事が中断してしまうのが不安である。

ちょうど北九大から送ってもらうものがあったので、ついでになんとかこの機械を救い出せないだろうかと考えた。発送をお願いする人がコンピューターに詳しくない人だったため、難しいことも頼めずとりあえず必要最小限の機材を送ってもらった。

今週の木曜日、必要最小限の機材である外付けFDドライブとシステムフォーマットされたFDが一枚イギリスに届いた。ほんとに最小限。でもこれでかろうじて触覚が回復する。まるでヘレンケラーのようなマシンに僕はコンタクトを試みた。

もしかしたら、起動部分が壊れているだけでFDから起動してやってコマンドを打ち込めば、ウインドウズが立ち上がるのではないか、というのがそれまでの楽観的な期待であった。しかしその期待は軽く裏切られた。Cドライブの中をのぞくとファイルがずたずたに壊れている。

こうなったら、まずMS−DOSからネットワークを確保して、深海に沈んだマシンに対して外から強制的にOSをインストールしてやるしかない。方針は定まった。しかし、ツールがほとんどない。

幸いなことに手持ちのLANカードの一枚はMS−DOSのNDISに対応しているらしい。もう一台のマシンを使ってネットにつなぎ必要なドライバーを捜してくる。ネットワークドライバーも必要だ。

最初に思いついたのがなぜかのべるのNETWEARクライアント。サイトを探して苦労してDOS用のクライアントソフトをダウンロードしたが、ファイルサイズが9メガ。たった一枚のシステムFDを経由して、コンピュータにアクセスしている状態ではとても使えない。

次はNetBEUIだ、と思って検索するとマイクロソフトが WorkgroupConnection というMS−DOS用のドライバーを無料で配布しているらしい。膨大なマイクロソフトのサイトの中を一生懸命さがすが、どこにも見あたらない(どうやら配布を中止したらしい)。そのかわり Network Client for DOS というのがみつかった。

MS−DOSをいじるのはもう何年ぶりだろうか。英語のマニュアルを読みながら、必要なコマンドラインを打ち込んでいく。なんども再起動をしながら試行錯誤を繰り返す。システムファイルのDOSは英語のままだが、どうせ日本語なんて関係ないので問題はない。ファイル管理ソフトのFDもインストールした。キーボードのアサインは不思議と指が覚えている。

config.sys を書き換えるのも久しぶりだ。しかし、マニュアルにあるとおりではどうもうまくいかない。事態はどんどん深みにはまり、やがてクライアントソフトの SYSTEM.INI だの PROTOCOL.INI だのも変更しなければならないはめになった。

あれこれ、ドライバーを入れ替えているうちに、かろうじてLANカードは認識されるようになった(たぶん)。診断ソフトを使うと二台のコンピューターがつながってるという結果はでる。しかし、どうしてもパケットが送られない。

IPX or NetBIOS must be running in order to load the network services.

何度やってもこのエラーメッセージが出る。もう一台の方に IPX と NetBIOS のプロトコルをインストールしたがだめだ。

というわけで、どなたか、MS−DOSでLANを組んだことがある人がいたら、良い知恵を授けてほしい。

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Takekawa Daisuke