[KOK 0248] ![]() 神渡り |
■年が明けて伊勢湾に浮かぶ篠島をたずねた。大漁旗をあげて祝う漁師町の正月。日本は海に生まれた国だ。 ■伊勢神宮の東に浮かぶ篠島では、八王子社の神霊オジンジキサマを、神明社にお迎えするオワタリサマの神事が行なわれる。3日の夕刻、八王子社に神が姿をあわらすと、全島の明かりが強制的に切られ、漆黒の闇の中、島の海浜を神が渡る。 ■宿の明かりや暖房もいきなり遮断された。島は海から消える。わずか十数分間の暗闇だったが、その時間は思いのほか長く、私の心を神代に連れ出した ■翌日の昼、オジンジキサマは島の男たちに迎えられながら再び八王子社にお帰りになる。 ■男たちはそれぞれの属する年齢組によってその役割が異なる。10代以下のこどもたちは豪奢な大名行列を、10代は派手な衣装を身に着け大胆にまう奴を、20代と30代は酒に酔い品を崩して舞い踊る傾者を、40台は裃を身につけ畏まった村役を、それぞれに浜に列をつくり神を待つ。 ■年齢のよる役割分担はきわめて対照的だ。それは、日本古来の年齢階梯制度を目の当たりにするような風景であった。これは人生における男たちの役割の縮図かもしれない。 ■ながいながい神事ののちに、砂を掛け合い大騒ぎする人間たちに誘われるようにして、神が、姿をあらわす。 ■いよいよ神は浜に駆け下り、舞い踊る。 ■人は、神の前にひれ伏す。雲間から光が差しおろす。神が戻られた。 『篠島史跡物語』河合いずみ著 37ページ「島の祭り」 |
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