【狂78】日常にひそむ数学の話・その1

95/5/16

●郵便受けにつけられた南京錠が2度にわたって取り外され、盗まれた。犯人は、私に個人的に悪意を持っているものか、あるいは南京錠はずしマニアだろうか。いずれにせよ気持ちが悪い出来事である。2度目の犯行は、5月10日の夜9時から翌朝7時の間におこなわれた。

●あけられて盗まれた二つの鍵は同じタイプの南京錠であった。それを以下に図示する。

    1■ ■5
    2□ □6
    3□ ■7
    4■ □8

●1から8までの数字があり、その横にボタンが並んでいる。そのボタンを適当に押すことによって、鍵があくという仕組みである。この南京錠は近くのスーパーに売っていたもので、オーソドックスな三桁の数字をあわせるダイヤルタイプに比べると、なんだかかっこいいし安全そうなのでこれを使っていたのである。値段も900円と3倍以上した。

●しかし、2度も盗まれて、この鍵の安全性を改めて考えてみなければならなくなった。

●0から9までの3桁の数字をつかうダイヤルタイプの鍵は、000から999までの千通りの組み合わせがある。それに対し数字が8個もありいかにも安全そうなボタンタイプの鍵は、実際には2の8乗の256通りの組み合わせしかない。

●一つの数字をあわせるのに6秒かかるとすると256通りの鍵は約25分であくことになる。一方、1000通りであれば1時間40分である。8個の数字が並ぶ鍵は見かけの割に、安全性が低いことがわかる。

●ところが今回もういちどスーパーにいき、同じタイプの他の鍵を確かめたところ、この鍵にはもっと決定的な欠点が二つあることがわかった。

●一つめの欠点は、暗証番号のボタンの数は必ず4つであるという点である。すると答えの組み合わせは2の8乗ではなく、(8×7×6×5)÷(4×3×2)=70通りになってしまう。先ほどの試算でいえば、わずか7分であけることができる。

●さらに、ほとんどの鍵の暗唱番号が右列と左列に二つずつになるように設定されていた。二つ二つの組み合わせで山をはれば、6×6=36。なんと3分であいてしまうのだ。どひゃー。

●わたしは、高校できちんと順列組み合わせの勉強をしておきながら、数がたくさん並んでいる見た目の派手さにだまされて、こんな間抜けな南京錠を使っていたのである。犯人も当然それを知っていたに違いない。

●狂の教訓。この手のボタンタイプの鍵はスーツケースなどでもよく使われているが、気をつけた方がよい。ダイヤルタイプの方がずっと安全である。ためになるなぁ〜。


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