はじめに

日本のはるか南にあるソロモンという小さな国でフィールドワークをはじめてもう10年になる。村に住みながら彼らと生活をともにすると、しばしば違和感と共感がないまぜになった不思議な感覚を持つことがある。これはいったい何なのだろう。

とまどいながらも、考えた。「ソロモンの人にとって大切なこと」と、「ぼくにとって大切なこと」それはどう違うのか。

初めのうちは、よくわからないままたくさんの失敗をした。みなに笑われながら、時には迷惑をかけながら、ぼくは子供のようにいろいろな事を学んだ。そして、このごろになって少しずつなにかが見えてきたような気がする。

ソロモンで生きるってどういうこと?人間って、生きてる間なにしてるわけ?

ソロモンだけが見えてきたわけではない、同時に日本も見えてきた。日本というより日本に覆い被さっている、「近代」の姿が見えてきた。これまで当たり前だと思って疑いもしなかった「近代」が、突然、化け物のような正体をあらわにした。

ソロモンの人々はそれを知ってか知らずか、「近代」と「非近代」をかるく超越する。このソロモンタイムのホームページでは、交換・人間関係・価値・時間、そんなキーワードを意識した。

そして、それはたぶん、今日本に住むわれわれにとっても、非常に重要なテーマになるはずだ。だから、遠い世界の珍しい物語なんて思わずに、同時代的な問題として読んでほしいと思う。

2000年3月
ソロモン諸島国首都・ホニアラにて 大介

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