ガウディの幻・ダリの夢

[KOK 0176]

01 Aug 2001


スペインから戻りました。印象的な旅でした。なにかを造りたくなりました。だから造ってみました。下の画像をクリックしてみてください。

ぼくなりのガウディとダリのイメージです。マウスなんぞをクリクリして遊ぶものです。

ダウンロードされた順に遊べるようになります。時間がかかりそうなときは、とりあえず十字架の左右にある「だれでもガウディ」と「だれでもダリ」で遊んでいるうちに、時を忘れるとおもいます。これは今回発見した「時の液状化理論」を応用した作品で、これさえ使えばだれでもダリやガウディのような芸術が創れるという画期的な代物です。

7つの星を集めると隠し画面にはいりボスキャラが登場します。その場合はたたかってください(なんのこっちゃ、わかりませんが)。

サグラダ・ファミリアの前に立つ。ガウディが手がけ、100年がたとうとする今も完成をみることのない聖家族贖罪聖堂。

そびえ立つ8本の塔は、すでに圧倒的な存在感を誇示するが、しかしそれは、本来あるべき姿のほんの一部でしかない。伝道師を象徴した4本の塔と、十字架を掲げるひときわ高い中心部の塔は、いまだ手をつけられることなく、すっぽりと抜けた空間だけが予定された建築の壮大さを物語る。

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完成した姿

ここは巨大なアトリエともいえるし世紀の工事現場ともいえる。100年ものあいだ、幾人もの芸術家や建築家たちがこの怪物の創造に参加し、そして死んでいった。残された年譜を見ると、それぞれの功労者たちがこの場にいた時間は30年ほどにすぎない。ひとつの才能が開花し円熟し、それが燃焼するまでの人生の時間というのは、わずかにそんなものなのだ。

体内にガウディ自身の棺を納めるサグラダファミリアは、人間の時間など意にも会さずそそりたち、超越する。

十字架が闇夜を照らす中央の塔は、あまりに巨大であるがゆえに、現在の技術をもってしても切り出した石のまま立ち上げることはできない。可能な限りの知識を駆使して素材の軽量と構造の安定を計算しながら建築は進められている。100年後の未来には、もしかしたらそれを立てることができるかもしれないという期待とともに。

そしてダリが生まれ育った街にいった。バルセロナの喧噪からは無縁のいごこちのよい小さな街だった。天才を自称した男の、いたずら心に満ちた美術館がその街にはあった。天才にはほど遠い自分もまた、なにかを造りたくなるような刺激に満ちた場所であった。

「造る」。人間はなぜ造るのだろう。人に許されているせいぜい数十年の短い時間の中で、いったいなにが造れるというのだろう。造ったものはそのあとどうなるのだろう。

ダリが少年期の夏を過ごしたという砂浜で、日がないちにち砂の城を造った。満ち引きを繰り返す潮と、地中海の穏やかな波が、いつのまにか水際の城壁を溶かしていく。そのなめらかな曲線。強い日差しに映る影。

そのとき、突然、気づいたのだ!

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空と人

ガウディやダリはきっとこの海岸でおなじ風景を見ていた!鍾乳洞を思わせるサグラダ・ファミリアの壁、やわらかい曲線に包まれたカサ・ミラ・ラ・ペドレラの室内。ガウディの建築は今にもとろけそうなイメージにあふれている。そしてダリもまた、液化するオブジェを空間のなかに好んで配置する。

その柔らかな存在は、今にも溶けだしそうである。いや、より正しく言えば、造られたものは今も溶けつづけているのだ。ただそれがあまりに遅いためにわれわれには止まって見えるだけなのだ。

移りゆく時間の一瞬を切り取って固定する視線。彼らの仕事は、普通の人は気づかないような短い時間を、普通の人には止まっているとしか思えないほどゆっくりと流れる時間に変換することであった。そう、この時間は、瞬間であると同時に永遠を指向している。

液状化現象といっただろうか。水がたっぷり入った砂の器を揺らすと、砂はまるで液体のように動きはじめる。動きを得た砂は、水とともに地表を伝いながら流れ出し、ある瞬間に動きを失い再び固体化する。この瞬間はあまりに唐突に訪れるため、砂は流れていたときの形をそのまま保ちながらその場に固まる。

時間がひとつの形になって切り取られる不思議な現象。カタロニア海岸の砂は、いともたやすくこの奇怪な立体を具現してくれる。そういえば石灰水のしたたれがが造りだす鍾乳洞もまた同じ原理でつくられた自然の造形ではなかったか。サグラダファミリアは鍾乳洞のような建築なのではなく、とどまることなく変容する鍾乳洞そのものだったのだ。

バルセロナの巨大な聖堂は、完成を待たずしてすでに溶けてはじめている。いや、砂の城には完成の時などない。創造とは常に崩壊とともにある。宇宙と自然のうちにおいて、人間の営為とは本来そういうものだったのだ。

しかし、置いてきぼりにされた崩壊を愛するのも人間であれば、それに抗い新しい砂を積むのもまた人間であった。

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Takekawa Daisuke