は じ め に

隆起によってできたその島の東岸は、みあげるような絶壁にとりかこまれ、そのまわりは珊瑚礁が発達した良質な漁場だった。むかいの島からわたってきた漁師たちは、魚とりに疲れると、崖のあいだにある小さな砂浜で、しばしの休息をとったという。この、珊瑚のかけらからなる純白の砂浜は「さらはま」と呼ばれていた。

漁師たちの仮の宿はしだいに村落を形成し、佐良浜はやがて沖縄で有数の漁師町となった。海の民は移住の民である。佐良浜の人々の目は、さらに海外にまでむいていた。1970年代には遠洋カツオ漁が莫大な利益をもたらした。浜のまわりの崖にはいつのまにか白壁の家がたちならび、独特な景観をうみだした。

漁師は宵越しの金をもたない。お金がなくなれば海に行く。だから佐良浜人のののみっぷりは尋常ではない。しかし、ここほど人情味にあふれた場所もないのだ。島にいれば食べ物の心配をする必要はない。だれもが昔からの身内のように親切にしてくれる。

島のまわりには日本が失った貴重な風景にあふれている。島の子供たちはそれがどんな贅沢なことか知らぬまま、今日も美しい海であそぶ。

 


 

 


さらはま写真記 大介研究室