その後のオヤバカオヤジ

[KOK 0110]

04 Jul 1999


7月2日は雨だった。北九州地方は、3日前の豪雨に引き続き大雨が予想されていた。ところが、それにもかかわらず、「第一回:男だけで飲もう会」には、20人にもおよぶ「オヤバカオヤジ」たちが集まった。

驚いた。つくった本人がいうのもなんだけど、あんなチラシを見て、幼稚園まで飲みに来る人は、まあよほどの人だろうから、一回目はせいぜい5人くらい集まってくれれば、十分だろうと考えていたのだ。

ここ三年ばかり九州に住んでみた感触で言えば、たぶん、ほとんどだれも来ないと思う。

前回のこくら日記では、こんなことを書いてしまった。九州のみなさん申し訳ない。ぼくの読みは大幅にはずれた。我が国の若い父親たちが、いかに「オヤバカをしながら酒を飲むこと」に飢えているか、そんな隠された現実を象徴するかような梅雨のさかりの出来事であった。

なにしろ、ただ幼稚園に集まって焼き肉をくらいながら、ビールやら焼酎やらを飲んでいただけなのだ。昼間は子供たちが使っている小さなイスに、まるでボリジョイサーカスの熊のように腰掛けて、6つ並べられた小さなテーブルを囲みながら酒を飲む。幼少の頃に帰ったような、なんだか妙に懐かしい光景である。自分の子供の名前を机の上に見つけて、ここが我が子の席かと感慨にふける父もいた。それでいいのだ、それこそ正しいオヤバカだ。

ぼくは宴会をまとめるのは苦手だから。「まあ、好き勝手にお酒を飲んで下さい。みなさんに集まっていただいただけで、ぼくの仕事は終わりです」とはじめに宣言して、さっさと飲みにはいってしまった。もっとも、20人が20人ともなかなか個性的な役者ぞろいで、ぼくの出る幕などない。

もちろん、ほとんどの人が互いに初対面なのだから、はじめは、ちょっと緊張していた。しかし、さすがは大人、無難な社交辞令から会話がすすみ、いつのまにか、各テーブル入り乱れての盛り上がり。

共通点といえば子供がいることだけ。年齢も職業も過去の経歴も知らない男たちが一緒に酒を飲んでなにが楽しいのか、不思議なものである。しかし、逆に考えると、年齢も職業も過去の経歴も関係ないところが、この集まりのおもしろさだったのかもしれない。

ちょうど20代後半から30代という世代もよかった。毎日はとても忙しいのだけれども、ある程度自分の仕事が見えてきて、それぞれの裁量をもって仕事を語れる年齢なのだ。知らない仕事の裏話はそれだけでおもしろい。

そして、みな自分の子供が好きである。たぶんこれが小学校や中学校のPTAの集まりだったら、こんなにうまくはいかなかっただろう。子供の成績や交友関係など、学校が作り出す奇妙な序列によって、父親の関係までぎくしゃくしてしまう。幼稚園はいい。みんなちがってみんないい。だれもが自分の子供が一番だと思っている。なにしろオヤバカなのだから。

年齢や社会的立場や学校に関係なく、こうやって自分の好きなことについて、知らない人と語り合えるのは、なんだかひさしぶりのような気もする。もしかして・・・幼稚園以来かな?雨足が強くなろうが、予定の9時を過ぎようがいっこうにオヤバカ熱は冷めず、用意されたすべてのお酒を飲みきって、9時半すぎに万歳のかわりに、怪しいウエーブと一本締めで会は幕を閉じた。

さて、というわけで、どうやら次があるようである。遠慮を知らないオヤバカオヤジたちの要望によって、第二回はぜひとも幼稚園の「若い女の」先生たちと一緒に飲みたいということでまとまったらしい。園長はあくまで職務命令は出せないという態度にでているが、会長としては進退をかけてこれを実現せねばならないところに追い込まれている。

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Takekawa Daisuke