総選挙

[KOK 0164]

08 Jun 2001


日本で、昨年のアメリカの大統領選ほど盛り上がったのかどうか知らないけど。昨日イギリスで下院の総選挙があった。

どちらに転んでも政策に大差がないアメリカの大統領選に比べると、イギリスの総選挙のほうがよほど日本の政治のモデルになるように思うのだが。

結果は労働党の圧勝。イギリスに住んで感じるのは根強い社会民主主義の風土である。どこを切っても大国覇権主義が幅を利かすアメリカとはその点が決定的に違う。イギリスの政治というと日本ではサッチャー時代のイメージが強いが、あの時代であってもサッチャーは議会運営に非常に苦労していた。

大英帝国という巨大な植民地主義国家と、労働運動の起源であり古くからの福祉国家であった二つの伝統はイギリスの政治の中で両輪をなす。どちらもその歴史と存在感において他国の比ではない。

hasi
投票に出かけよう、さもないと、奴らが入っちゃうぞ

他言語他民族に対する傲慢とも言うべき英国中心主義と、私のような一時的な滞在者であっても保険医療がうけられ、18歳までの医療費と教育費は無料であるというような根強い人権意識は、この国においては不思議なことに矛盾しないのである。

今回の選挙の争点も医療と教育だった。この2点の予算をさらに重点化するというのが労働党の主張だ。経済の問題に関しては、労働党は従来の方針を180度転換し、自由化政策を維持しながら国家の介入を小さくしようとしている。そして、ここ4年ほどの成果を見るとその試みは一応の成功を収めているようだ。

「[kok0156]市場競争と個人主義」で書いたように、「自由な競争」と「機会の公平」という二つの目標は互いに相容れない物ではなく、自己責任の原理を組みこめば実はほとんど同じ意味である。ネオリベラリズムとよばれるこのスタンスに新しい労働党もおそらく依拠している。

現代のイギリスにおいては、通貨ユーロをはじめとするECの圧力にさらされながら、国家という枠組みがどこまで有効に機能しうるかが試されている。

21世紀半ばまでに、シーラカンスのように世界で残る最後の国家(ネーションステート)は、日本かなそれともイギリスかな、とそんなことをふと考えた。

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Takekawa Daisuke