[KOK 0277] こくら日記のトップページにとぶ 24 Oct 2006

チョコレート工場の行く末

 

急速な勢いで日本の貧困化と階層化は進んでいるらしい。収入によって日常的に利用するスーパーマーケットまで違っているイギリス社会を思い出す。

経済の自由化といっても、はじめからフェアーなゲームではない。お金はお金に吸い寄せられる。経済の格差は、遺産や社会的な人脈を通じて世襲される。二大政党制といっても、いずれも資本を持つ企業経営者の利益代表である。自ら資本を持たない者は政治的にも経済的にも力を失い、ますます不利な状況に置かれる。

やがて小規模な資本家も淘汰の対象となる。大規模資本に有利にはたらく自由化によって、自営業は経営が立ちいかなくなりサラリーマンとなり、市場の小売店は大型店舗にお客をとられ、個人商店はフランチャイズ化してコンビニと化す。

農業だって同じことだ、日本の農業ががたがたになっても、当面は持っている土地を売りながらしのぐことができるから、まあ20年くらいは貧困は表面化しないかもしれない。気づいたら農地はすべて大規模農産企業に買い上げられ、農民はその企業の労働者になる。雇ってもらって、会社の土地を会社のために耕すのだ。

京都

いつの間にか大企業の思うがまま、消費者や労働者は生かさず殺さず。格差や搾取から目をそらせるのであれば、どんな娯楽でも提供しよう。牛丼を昼ご飯に働き、バーゲンで売れ残りの流行を追いかけ、家ではテレビで野球でも見て日頃の不満を解消。ファーストフードの新メニューや遊園地のアトラクションを人より早く日記に書く幸せ。誰もが知っている極秘のおいしい店情報。エコロジーな自動車は温暖化にも優しい。あとは、ときおり就職難をちらつかせて、サラリーマンになるために必死に企業にすがってくれればなおのことよい。心配すべきは地球環境や政治の不公正や資本の独占ではなく、引きこもりの子供の就職先だ。

したたかな世界経済は、少数民族・異教徒・インディアン、あらゆる他者をも内部に取り込み商品化する。まるでこのスモールワールドの外にはなにも世界が存在しないかのようだ。無毒化された代替品に巧妙にすり替えて、異質なものを見えなくする。不幸な者はどこにもいない。信じるべきはアメリカンドリーム。なれるはずもない夢をみせておけ。

セレブ番組をよろこぶ低所得者。うちのお殿様は他の国よりも豪勢だと喜ぶ百姓の気持ちだろうか。豪勢なお殿様を支えているのが自分たちから搾取した米だとしても、そんなことは思いつきもしない。セレブたちのほとんどは、たまたまの運や親からの相続にちがいないのだが、それでは番組にならないので、押しつけがましい努力や才能のオンパレードである。まるであなたが貧乏なのは、自分が怠けていた責任だと言われているようだ。彼等が着飾っているのはあなたのものだったお金かもしれないのに。

京都

お金を持っていない人は、どうしてお金を持っている人にこんなに甘いのだろう。甘いどころか憧れちゃったりするのはなぜだろう。どこか、ふがいない自分を後ろめたいと思っているのだだろうか。

嫉妬を悪い感情として抑圧され、恨むべき相手にあこがれる。まったく屈折している。人の給料をきくことは現代社会のタブーである。長者番付も今年からなくなるらしい。高学歴やスポーツ選手が高額のギャラを受け取るのは正当だろうか?私は正当だとは思わない。

頭の悪い人も頭のいい人も同じくらいに幸せに生きられた方がいい。頭のいい人はただでさえ頭が良くて幸せなのだから、「お金の幸せ」くらい頭の悪い人にゆずってもよいと思う。身体の悪い人も身体のいい人と同じくらい幸せに生きられた方がいい。身体能力の高い人はそれだけで健康で幸せなのだから、「お金の幸せ」くらい不健康な人にゆずってもよいと思う。

京都

そんなアイデアをだすと、敗者のひがみだという、地位も才能もない者が何を言っても笑われる。貧乏人の哲学は、そうやって戯言として消費され、社会を変える力には決してならない。


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