【狂142】いかりとかなしみの沖縄

96/03/12

■時間があればいくらでも書きたいことがある。とりあえず、いかりとかなしみの表明をしておく。

■今日、沖縄県県知事にたいして日本国政府がおこなっていた、米軍基地接収にかかわる職務執行命令訴訟が結審された。被告の大田昌秀知事の要求していた証人申請を却下する強引な結審である。これで判決は3月25日に決まった。この結審が、今月の31日に切れる軍用地の使用期限にまにあわせたい政府側の意向に、歩調をあわせたものであることはあきらかである。つまり裁判所は、はじめからまともに審理する気などなかったということだ。

■昨年からの一連の事件の処理をとおして、沖縄の人々が、どれほど日本という国の冷酷さに打ちのめされたかを思うと、ヤマト(本土)の人間のひとりとしてやりきれない思いである。けっきょく、島の人々を見殺しにしたあの第二次世界大戦のときと、なにも変わってはいなかった。ヤマトの人間の無関心は、犠牲をしいられる人々にとっては、もはや残忍な無神経さでしかない。

■今年の正月に、読谷の彫刻家、金城実と酒をのんだ。金城のおじさんは、わたしが季刊民族学に書いたイルカ漁の文章をとっても気に入ってくれて、自分の子どものころ村に鯨があがったときの話なんかをしてくれた。久しぶりにうまい酒だった。

■最近になってはじめて知ったのだが、つい先月の中頃、金城氏を慕って彫刻家になるために沖縄に移住した大阪の青年が、米兵にひき殺された。ヤマトではほとんど取りあげられなかった事件である。かなしくてかなしくてしかたがない。


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